SNSやグルメサイトの口コミでは、料理のクオリティーよりも接客の良し悪しが店の評価を左右している例が多く見られます。
接客の対応ひとつで苦情が発生する時もあれば、最高のひと時を感じてもらえる時もあります。接客力が高まれば、店は必ず変わります!
接客力を高めるって、どうするの?
うちは居酒屋よ?高級レストランじゃあるまいし…
という疑問やモヤモヤを感じていませんか。
実は、接客には、「接客の質を決定する3つのステージ」というものが存在します。それは、居酒屋も高級店も関係ない、おもてなしの根幹部分です。
そのステージに沿って接客力を高めていくことで、全員が効率的に接客力を高めていくことができるようになります!
この記事では「接客の質を決定する3つのステージ」と「自分の店の接客レベルの調べ方」を紹介します。
接客力の向上を通して、1人でも多くのお客様に「もう一度来たい」と思ってもらえる店づくりを頑張っていきましょう!
■飲食店で店長を10年以上経験している現役飲食店長です。
■(こんな僕ですが)飲食業界で働く人の悩みや不安を解消したい!
■飲食サービス業が大好き!魅力ややりがいを伝えたい!
■お客様、上司や部下、アルバイトさんと接した日々は宝物
接客の質を決める3つのステージとは
初級:基本的なサービスができる
①作業の正確性
正確性とは、作業にミスが無いかという基準です。気配りやおもてなし以前の、飲食店スタッフとして習得するべき基本的な作業をこなす力です。
顧客満足を獲得する接客力の要素の中で、正確性は最低限の土台となる部分です。
オーダー取り・席案内・お会計など、忙しい時は一つのミスが命取りです。新人さんには簡単な作業から順番に習得させ、戦力化を目指しましょう。
注文した料理が違ったら…会計が間違っていたら…予約が漏れていたら…アカンです。
②笑顔
接客中に自然に笑顔を出すことができるスタッフは、視線が優しく、余裕を感じられるため、安心感や親近感を与えます。
笑顔のない接客は、店の作業を正確にこなしていても、「冷たい」「機械的だ」と感じられてしまいます。料理の味わいや店の居心地に大きな影響を与えます。
慣れていない新人さんが笑顔じゃないのは仕方ありません。先輩スタッフ・店長が常に笑顔でいるか、店の雰囲気がそうなっているか、です。
僕も無表情になってるかも…
③スピード
接客サービスにおける‟スピード”とは、「お待たせしない快適な接客」の事をさします。単純に「早く動く!ダダダッ!」ではありません。
顧客は「待たされる」ことに対してとても敏感です。料理提供の時間と同じように、接客サービスのスピードが遅い場合も不満を感じてしまいます。
ただ早く動き回れば良いのではありません。それだと単に慌ただしくバタバタしているだけです。ポイントは「すぐに反応すること」です。
アルバイトさんは目の前のサービスの速度を上げる訓練をし、店長は、忙しい時ほど「どこかに待たされているお客様はいないか」に目を光らせましょう。
④丁寧さ
■丁寧な動作
お客様と接する時の1つ1つの動作を丁寧に行う事で、安心・信頼感が生まれ、居心地のよい雰囲気を感じさせることができます。
丁寧さの意識が高い接客さんは、慌ただしい時間帯や人員が少ない時でも、お客様と接する数秒は歯を食いしばって丁寧にするという意識を持っています。
お客様に接する動作はゆっくりと、それ以外の作業はテキパキと行い、メリハリのある接客を心がけましょう。
料理を置く時にドンッとならないように。
■丁寧な言葉使い
接客時は、地声より少し高いトーンで、滑舌良くハキハキと、よく聞き取れるボリュームで会話をすると、ストレスが無く、快適に感じます。
敬語や接客用語をどのレベルまで使うかは、店の雰囲気や店長の基準で決まります。求められる店の雰囲気やお客様との距離感と、言葉使いとの間に違和感がない事が大切です。
加えて、「声の表情」も、接客の印象を大きく左右します。年齢や客層で声のトーンや言葉使いに最適な変化を付けられれば満点です。
声の印象や言葉使いで丁寧さを演出できるのね
中級:顧客満足を獲得できる
⑤立ち振舞い
立ち振舞いとは、待機の姿勢、お辞儀の角度、トレイの持ち方、歩くスピードなどの「基本動作」と、そろった指先、襖の開け方などの「美しい所作」の事。
立ち振舞いは、自然と周りのお客様の視界にも入るので、店の雰囲気や居心地に大きく影響します。何もしていない時の立ち姿は特に意識しましょう。
また、新人さんや部下への注意の仕方や接する態度など「店長・先輩スタッフとしての立ち振舞い」もお客様に見られていることを忘れてはいけません。
⑥優先順位の把握
「バタバタと慌ただしい」と「活気があって雰囲気が良い」の差は、優先順位に沿って指示が出ているか・行動できているかの違いです。
スタッフ全員が同じ優先順位を理解し、共有する事で統率がとれ、より良いおもてなしを提供することができます。
どんな順番なんだろう?最優先する事って?
一般的に、‟ピンポン”‟すみませーん”といった呼びかけへの反応が最優先で、続いて料理提供>レジ会計>バッシングや備品の補充の順です。
来店客の出迎えの対応や、電話がかかってきた時の対応など、詳しくは【接客力の高め方②】を参考下さい。
忙しくてやる事が重なると、目の前のことしか見えません!
店長やベテランスタッフは、「全体を見て優先する作業を指示する」「重なった時はフォローする(優先順位下位の接客を引き受ける)」ことが求められます。
「店長の指示の出し方」はこちらの記事をみてね!
⑦気がきく
気のきいた接客とは、お客様から言われなくても、先回りしてお客様が嬉しいと感じることができる接客です。
マニュアルにも無く、やらなくてもクレームになりません。しかし、その一手間・一言が気配り・心配りとなって、顧客満足を大きく高めます。
気がきくスタッフは、お客様を良く観察し、何かに気付くアンテナを持っています。自らの判断でお客様が快適になる行動をしています。
そのようなスタッフは、モチベーションも高く、経験から‟気のきかせ所の引出し”が豊富なので、高い顧客満足を獲得することができます。
上級:顧客感動が生みだせる
⑧客層に合わせた接客
◇基本:メインターゲットに響く接客を心得ている
飲食店を出店する時は、周辺の居住地域や立地を考えてターゲットとなる客層を絞ります。
そうやって絞り込んだメインの層に満足してもらうための行動とおもてなしに特化して、準備・サービスできているかが顧客感動を生み出すポイントになります。
接客時の会話の早さや声のトーン、目線や表情、立ち振舞いのスピード感や丁寧さを、ターゲット層の年齢や性別にマッチさせる事が大切です。
会社員、家族連れ、観光客…接客スタイルを変化させられれば達人!
◇ハイレベル:より多くのお客様が顧客感動を感じるおもてなしができる
お客様ひとりひとりの要望や不安・不満を解消するおもてなしができれば、顧客感動がさらに高まります。
妊婦の方、着物の方、子供連れの方、高齢者、それぞれのお客様が抱えている不安や要望をくみ取る接客サービスが求められます。
さらに、車いす、聴覚障碍者・盲導犬対応など障碍者の方への配慮は適切か、外国人への気遣いができているかという取り組みも大切です。
お客様に喜んでいただけるように、できる事から始めるわ!
このような気配り、心配りのある接客をするためには、「備品の準備と接客訓練」が欠かせません。店長の意識、行動力にかかっています。
⑨利用動機に合わせた接客
利用動機とは、お客様が何のために来店して食事をしているのか、「食事に来た目的」の事です。
客層はサラリーマン層でも、「取引先との接待」「社内の打ち上げ」「送別会」「歓迎会」「同僚との飲み会」など、食事をする目的は様々。
このような場合は、個人よりも、その席全体の満足度を最大限に高める接客が求められます。
いつも通りの接客の他に、何をすればいいの?
「出迎え・見送り」「上座・下座、主賓の確認」「幹事様・施主様への挨拶」「スムーズな乾杯」「料理を出す順番」など気を配るポイントがいくつかあります。
お店側の気配りや心配りは、必ずお客様に伝わります。その席の顧客満足度が高ければ、その場のお客様全員がリピーターになるかもしれません。
確かに、「次は個人的に来てみよう」と思えるお店ってありますね!
⑩パーソナルな絆
パーソナルな絆を感じる接客とは、お客様のプライベートな部分の喜び、楽しさといった感情に共感し、寄り添う接客です。
パーソナルな部分とは、お客様個人の仕事や趣味、家族の成長や人生の節目の祝いに「共感して喜ぶ・悲しむ」というイメージです。
事前に分かっていたり、時間的な余裕があれば「メッセージカード」「お店からサプライズの料理」を提供すると、より店からの気持ちが伝わります。
仕事や趣味の切り口で喜びを共感するのは、広い見識が必要
マニュアル化できる部分と、接客さん個人のポテンシャルに任せる部分があります。
「この人に会いに店に来る」という接客さんは、パーソナルな絆を大切にしています。
居酒屋と高級店の違いは?
どこまでを求めるかの違い
どんな店でもこれらの3つのステージは変わりません。
でも、高級レストランと居酒屋だと、雰囲気ずいぶん違うわよ?
それは、各項目の中で店長が求めるレベルが違うからです。そのレベルの違いが「高級だ」「フレンドリーだ」という違いに現れているのです。
高級レストランで元気いっぱいに「いらっしゃいませ!はいっ!喜んで!」と発声すれば、必ずクレームになるでしょう。
居酒屋で「一旦停止し、腰を折るように45度の角度でお辞儀する」というレベル丁寧さは、雰囲気に合いません。「そこまでしなくてよい」となります。
店長は「あるべき接客」を明確に!
店長は、あなたの店が求める接客イメージを明確にする必要があります。チェーン店であれば、店のターゲットやコンセプトをもう一度思い出してください。
店長は、自分の店のあるべき接客のゴールイメージを明確にし「何をどこまでやりきれば、ステージクリアか」を明確に示さなければなりません。
「45度のお辞儀なんていちいちやってられるか!」ではなく「テーブルを離れるときだけは絶対ペコリってしよう!」など、店長の基準があるかどうかが大切です。
自分の店なりの「質の高い接客」を作り上げよう!
あなたの店の接客レベルを調べる
「おもてなし基準表」を作る
3つのステージの10項目を、それぞれ達成度10点で、合計100点満点の表を作ります。
自分が普段どれだけ意識をしているかを点数にしてもらいます。
単純に何割ぐらいできているかなぁ…と採点してもらうのでも良いですし、具体的に達成するべき基準を店長が細かく設定しても良いです。
自分で点数を付ける(自己評価)
表ができたら、接客さんに自己評価してもらいます。
難しく考えず、普段どれだけ意識をしているかを点数にしてもらうイメージです。達成すべき基準が明確に設定されていれば、達成した数を書きます。
改めて点数を付たら、意識が弱いステージが目立っちゃってw
改善して欲しいこと(作業や設備・シフトなど)を自由に書く欄も設けます。
店長から見た評価も(他者評価)
基準があるステージは、きちんと見極めて。その他のステージは普段の行動や表情を見ながら点数を付けます。
ただし、ある一瞬だけを切り取って評価してはいけません。また、ピーク時間帯の行動や、接客さん同士の声の掛け方・連携の仕方もよく観察します。
店長は、点数を高めに評価をするのがポイント。この後のミーティングを円滑にし、接客さんに自信を持ってもらうためにも、甘めに点数を付けましょう。
えてして、接客さんの自己評価は低くなりがちだからね
ミーティングですり合わせる
改めてミーティングなんてやりづらい!という方は、「じゃ、サクッとやりましょうか」という軽い感じのスタンダップミーティングでもOKです。
【ミーティングの冒頭で伝える事】
✔「 記入してくれてありがとうございました。」
✔ 「この店の接客力は低いわけじゃなく、むしろ高い方です。」
✔「ただ、改めて点数にする事で、1人1人の課題を把握したいのです。」
【ミーティングの最終目標は3つ】
①本人が目指す次のステージを共有すること。
特に新人さんは、まだ覚えていないことや、あやふやな部分が多い。課題を整理して、早く1人前になってシフトを任せられるようになってもらう。
②褒めるが9割。点数にそって、普段の行動をもとに具体的に褒める。
③欄外の‟店への要望や改善して欲しいこと”の聞き取りです。
この機会を活かして、コミュニケーションを深める!
ミーティング中は、できていないことを指摘するよりも「じゃあ、目指すステージはここですね」と一緒に設定してあげることが目標です。
獲得点数の目安
自己採点と店長採点のすり合わせで、50点以上を獲得した接客スタッフは、「顧客満足」を感じさせるサービスを提供できる人財といえます。
それ以下の点数のスタッフは「作業面は問題なく、お客様に不満を感じさせることはないが、顧客満足を与えられていない」ということになります。
70点以上を獲得し、ステージが上級に近づいているスタッフは「顧客満足」「顧客感動」を獲得できる人財として、繁盛店には欠かせない存在となります。
あなたが接客スタッフに求めるレベルは
・「とりあえずクレームにならなければ良い」
・「質の高い接客でリピーターを獲得できる」
のどちらでしょうか。
まとめ
料理と接客は飲食店の両輪です。接客が良くなれば、必ず店に変化が起きます。
そのちょっとした変化は、いずれ必ず売上アップに直結するはず。
また、接客力アップの取組みを通して、モチベーションが上がったり、店長・従業員通しのコミュニケーション量が増えます。
職場の雰囲気が前向きなエネルギーに包まれるでしょう。
ちょっとでも接客に課題を感じたら、ぜひ取り組んでみよう!
具体的に、どうやって接客力を上げればいいんですか?
ミーティングが終わって、みんなの課題がハッキリしたら、「どうやって教育をすすめていけばいいのか」という壁にぶつかります。
多くの店長は、採用したアルバイトさんが「早く作業を覚えて、ワンポジション守ってくれるようになればそれでいい」と思って教育を終えてしまいます。
しかし、その先のステージは、店長の強い意志がないと達成できません。その先にある「顧客満足」「顧客感動」を与えるような接客を実現し、繁盛店を目指しましょう!
接客力を高める教育法や具体例の記事はこちら!