飲食店の店長になるための特別な資格はありません。
「資格が無くても、立地や雰囲気、料理や接客の方が大事なんじゃ?」
「資格を取るより、調理技術やセンスを磨いたり、広告宣伝をする方が重要でしょ」
という考えの方もいるでしょう。
確かにその通りですよね…
それも大切な事だけど、資格をあなどっちゃいけない!
会社によっては、昇進の条件になったり、取得するだけで手当てがつく資格もあります。月収アップ・人事評価にプラスに働くような資格は要チェックです。
個人経営でカフェや居酒屋を開きたい方も、取得しておけば開業後の経営や実際の現場で役立つ資格がたくさんあります。
もっと良い会社に転職をする時には、自分の経験を話すだけでなく、スキルを裏付ける資格があれば採用判断において有利になることも。
さっそく資格の勉強をしよう!
■飲食店で店長を10年以上経験している現役飲食店長です。
■(こんな僕ですが)飲食業界で働く人の悩みや不安を解消したい!
■飲食サービス業が大好き!魅力ややりがいを伝えたい!
■お客様、上司や部下、アルバイトさんと接した日々は宝物
責任者は取得必須な資格
食品衛生責任者
取得方法 各自治体の保健所で、1日講習を受ける(月数回実施)
申込方法 最寄りの保健所に行き、書類に記入し提出
講習費用 約10,000円(自治体によって異なる)
食品衛生責任者プレート 700円
食品衛生責任者の業務は、食中毒や食品事故を防ぐために、食品の製造や加工、保存、提供などに関する衛生管理です。
食品衛生責任者とは、食品衛生法で定められた資格で、全ての飲食店や食品事業者に設置が義務付けられている資格です。
資格者は経営者本人でなくても構いません。店に常駐するスタッフ1人が責任者として資格を持っていれば大丈夫です。
しかし、1人の責任者が複数の店舗を兼任する事は認められていません。
受講は丸1日かかります
防火・防災管理者
防火管理者の業務は「建物の火災による被害の防止・軽減を行う者」として、消火訓練の実施、避難通路や防火扉周辺の整備などです。
店長や調理長のような、従業員を管理・監督する立場の者が管理者となります。管理者の設置は消防法により選任が義務付けられています。
飲食店は火災のリスクが高いので、しっかり受講しよう
防災管理者は消防法に基づき「地震など、火災以外の災害による被害の軽減」を目的に、避難訓練の実施や災害発生時の被害の軽減に努めます。
防火管理者講習を受けた者が対象となるため、ほとんどの自治体では「防火・防災管理者講習」として同時に受けることでどちらも取得できます。
申し込みは一般財団法人日本防火防災協会から。ネットかFAXでの申込で、電話受付はしていません。
講習は1年を通して常に行われ、1か月半~2か月前に受付開始。
申し込もうとしても、2か月以上先の受講になる事も珍しくありません。まずは申し込みを済ませよう。
ネットでは最寄りの消防署以外の会場の空き状況も見られるので参考に。
独立開業する方も、サラリーマン店長も取得必須の資格です。
収入UP・昇進・転職に有利な資格
衛生管理者(第1種・第2種)
衛生管理者は、労働安全衛生法に基づいて労働環境の管理や労働者の健康管理、労働衛生教育を行う国家資格です。
主に労働災害の防止のため、職場に危険な場所はないか、職場の環境は適切に管理されているかなどを、週に一回巡回してチェックしなければなりません。
常時50人以上の労働者を使用する事業者は、その事業所専属の衛生管理者を選任しなければいけないと、法律で義務付けられています。
受講資格 労働経験が3年以上(大卒は1年)など、細かい規定があるが、ほとんどの方は受験可能
申込方法 該当する地域の安全衛生技術センターから申込書類を取り寄せ、郵送か窓口に直接提出する
受験料 6,800円 第1種2種同じ(合格時は免許申請料1,500円)
必要書類 大学もしくは高校の卒業証明書のコピー 事業者証明書など
法律で選任が義務なので、会社から取得を命じられて何度も受験をしている人もいます。
企業によっては資格取得に向けて受験料の補助があったり、資格保持者には手当てを支給したりするケースが多いです。
規模の大きい飲食店や大手チェーンに勤めている人は取得しておきたい資格です。
1種の合格率は42.7%、2種は49.7%です。
1種は、2種の範囲に「有害業務」の分野が加わります。飲食店には関係ないような危険な化学物質の名前を覚えるのはひと苦労かもしれません。
飲食店の店長は2種で十分ですが、1種の方が手当ての金額が高い場合は「とりあえず2種を取って…」ではなく、最初から1種を目指して勉強しましょう!
受験会場は全国で6か所しかない。(臨時で出張会場が設けられる時もある)
申し込みの必要書類が多い。(再受験をする時は必要ない)
毎月2回~3回実施されるが、すぐに埋まる。(ネットでは最寄りの会場の空き状況が見られるので参考に→安全衛生技術試験協会HP)
幅広い範囲を暗記しなければならないため、長期的に計画を立てる必要あり。
語呂合わせ暗記と過去問反復で目指せ一発合格!
簿記(2級・3級)
簿記はそもそも進学・就職・転職に有利な資格として知られています。
簿記3級は、業種・職種にかかわらずビジネスパーソンが身に付けておくべき「必須の基本知識」として、多くの企業から評価される資格です。
受験方法① ペーパー試験(統一試験)年3回 大学などの大規模な会場で行われる。
受験方法② ネット試験 ほぼ毎週。自宅ではなく全国各地にあるテストセンターにあるパソコンで受ける。
申込方法 ペーパー試験…最寄りの商工会議所に問い合わせをする。 ネット試験…会場選択・申し込み・支払いは専用ページから。
受験料 3級2,850円 2級4,720円 (+事務手数料550円)
店長の役割は、店の黒字化や会社からの目標の達成です。肌感覚だけでなく、数字に基づいた経営の管理・判断ができるスキルが求められます。
昇進の条件になったり取得者に手当てが支給されるのは、現場の店長にこそ、簿記のスキルが求められているからです。
せめて自分の店のPL(損益計算書)ぐらいは理解したい…
個人経営者であっても、費用や収益のお金の流れを理解し、年間の決算書を作成できるスキルが身に付きます。税務申告も自分で行えるようになります。
簿記3級の目安勉強時間は知識0で50~100時間です。社会人であれば1か月半~2か月位を要します。
受験回数や交通の便から、ネット試験が断然おススメです!
簿記2級は、高度な会計知識を持ち、財務諸表から経営状況を分析ができるなど「最も企業から求められる資格」といわれます。
2級の内容は、工業簿記や子会社連結会計など、飲食店の店長の業務内容では扱わない分野が多く、取得には気合いを入れて勉強する必要があります。
ただ、外食産業でも、会社の財務・経理・経営企画部などへの異動・転職には非常に有利な資格です。
簿記2級は転職市場で好待遇の求人が数多くある人気資格!
勉強時間の目安は簿記3級取得者で250~350時間です。
メンタルヘルス・マネジメント検定(Ⅱ種)
メンタルヘルスケアは特に重要なマネジメントスキルとして、管理職などのポジションにつく人材に必須の資格です。
従業員の心の不調に対処・予防し、より良い職場環境づくりを構築する知識や方法を習得できる資格です。
近年は、職場での悩みやストレスで、精神的な不調になる社員が増えており、メンタルヘルス問題は企業が取り組むべき重要な課題となっています。
離職率が高く、人手不足に悩む職場にとって深刻な問題です。
メンタルヘルスケアのスキルは、従業員の離職・休職を防げるだけでなく、モチベーションが上がることによる業務の効率性、生産性を向上が期待されています。
Ⅲ種はセルフケアコースで、組織の中で一般社員が自分自身でメンタルケアを対策する内容です。
Ⅱ種:ラインケアコースは、組織の管理監督者(管理職)を対象に、上司として部下のメンタルヘルス対策スキルを身に付ける事ができます。
昇進転職に有利になるのはⅡ種なんだね
調理師免許
受験日 年1回(都道府県により異なる)試験日が異なる都道府県をかけもちして受験するのはOK
受験資格 飲食店業その他法律で定める施設で2年以上従事したもの
受験料 6,400円 免許申請手数料 5,400円
申込方法 都道府県ごとに申込む「〇〇県調理師免許」でググるか、調理技術技能センターHPから
必要書類 願書や受験料の領収書以外に、会社が記入する調理業務従事証明書、中学以上の卒業証書・証明書、戸籍謄本などが必要
調理師免許が無くても、実際の調理の仕事や飲食店の経営をすることは可能です。調理師免許はその人の調理技術を保証するものではありません。
パートアルバイトでも2年間の飲食店勤務実績があれば、受験資格を得られます。また、試験内容は筆記試験のみなので、合格率は65%とやや高め。
ですので、飲食業界に全く関係のない人でも「私も調理師免許もってるわよ」なんて言われてしまい、意味のない資格のように扱われることもあるとかないとか…
しかしながら、調理師免許は食に関する専門知識を持っていることを証明する国家資格です。食の歴史や調理理論、衛生管理をしっかりと学べます。
調理や食の基本を体系的に学ぶのにぴったり!
食に関する資格としてはメジャーな資格です。飲食業界に勤務している方は転職や昇進に有利に働きますし、資格手当てが支給されることもあります。
また、「ふぐ調理師」「専門調理師・調理技能士」といった、一歩進んだ資格試験を受験する際にも、調理師免許が受験資格のひとつとなっています。
まずは受験日を確認し、願書を取り寄せよう!
強み・スキルアップ・転職に有効な資格
英語応対能力検定ランクA・TOEIC(600点)
受験日 自宅のパソコンで受験するため、いつでもOK
評価 合格不合格ではなく、A~Dのランク付けがされる
受験料 7,150円
申込方法 英語応対能力検定HPで
飲食・販売に関する語彙力、文法力、応答力などが総合的に身に付きます
近年のインバウンド需要の高まりで、特に観光地や都市部の飲食店では、海外のお客様と英語で話さないと通じない場面が多くなっています。
そのため、海外のお客様にも食事を楽しんで頂くための、最低限のおもてなし英会話を身に付けている接客スタッフの需要は多いでしょう。
身振り手振りやカタコトの英語は恥ずかしい…
基本的な接客ができることを前提に、+αの評価として英会話スキルが身に付いていることは大きな武器になります。
「英語で接客ができます(していました)」を裏付ける客観的な資格として「英語応対能力検定」や「TOEIC」の取得を目指してみましょう!
各ジャンルの専門知識の民間資格
「和食検定1級」や「ソムリエ・エクセレンス」は合格率1ケタの難関資格です。民間資格ですが、同業他社への転職には強烈なアピール材料になるでしょう。
転職をしなくても、自分が携わるジャンルに関する資格を取ることは、普段の営業に大きなプラスになります。
知識が深まり、整理されることでお客様との会話や部下への指導に役立ちます。売上アップの企画・販促にも手助けになる事は間違いありません。
実務経験が必要な資格は、仕事を通して取得できるのが良いですね!
仕事に対する真摯で積極的な態度は社内で必ず評価されます。自己研鑽をするなら資格を取得し、具体的な成果でライバルに差をつけましょう。
着物着付・接遇検定・アンガーマネジメントなど
「食」以外の知識やスキルを身に付けられる資格も数多く存在します。
資格を通して身に付けた知識は、自分の財産になるだけでなく、部下への指導を通して店舗・会社全体のレベルを上げる際の武器になります。
料理以外の付加価値のレベルを上げるのに役立ちそうだね!
例えば「サービス接遇検定」は準1級以上は実務面接があり、1級になれば合格率は30%を切ります。表情や声のトーン、姿勢なども採点対象になります。
ホテルのレストランや老舗料亭などで求められるレベルの言葉使いや立ち振舞いは、検定を通して身に付ける事ができます。
「着物着付け師」「テーブル・食空間コーディネーター」は、来店されたお客様により高い満足度を与えられる資格です。
自分の店や会社で、すぐに活かせる知識とスキルが身に付きます。
気軽に勉強を始めてみようかしら
次は、アンガーマネジメントに関する資格です。社員の指導・育成に役立つスキルとして、様々なビジネスシーンで急速に需要が高まっています。
飲食店の店長は「忙しくなると怒り出す」「いつもイライラしている」などと言われがちです。
アンガーマネジメントは、怒りをコントロールする個人のスキルであると同時に、職場全体の環境づくりにもプラスに働きます。
「アンガーマネジメントベーシック資格」は日本アンガーマネジメント協会認定の資格です。ユーキャンの通信講座を受講することで取得できます。
まとめ
外食産業、飲食サービス業界は資格が無くても誰でもできる業界です。しかしその分、資格取得・スキルアップは自分の市場価値を高める大きな武器になります。
この記事では、飲食店、とりわけ店長など責任者として働く人の収入アップ、昇進昇格・転職に有利な資格を紹介しました。
YouTubeで解説動画がある資格もあるので、通勤時間やちょっとした隙間時間を利用して無料で勉強を進めることも可能です。
周りに差をつけ、昇進昇格・給料アップを実現しよう!