飲食店で、店側の不手際でお客様の衣服を汚してしまった時は、どこまで補償するべきなのでしょうか。
全額定価で弁償するべきなのか、クリーニング対応だけでよいのか、弁償・補償の範囲を判断するのは難しく、迷ってしまう人も多いのではないでしょうか。
高級ブランドだったら…補償の範囲は気になります。
店舗責任者は、汚されてしまったお客様の気持ちを汲み取り、できる限りの対応をしなくてはいけません。
一方で、店が100%悪いことを逆手に要求をエスカレートさせる、モンスタークレーマーのようなお客様に対しては毅然とした態度で臨む必要があります。
「すぐに解決してしまいたい」「上司や会社にバレたくない」と、要求に屈したり、しなくても良い約束や弁償をさせられる事は避けなければなりません。
この記事では、衣服汚損の弁償の範囲やその金額について解説します。
この記事は、お客様の衣服や物品を汚してしまった時の弁償の範囲や金額の基準を紹介する記事です。
いわゆる「ぶっかけ」を起こしてしまった時にやるべき事・注意点は別の記事をご覧ください。
原状回復をすれば良い
①基本はクリーニング対応
店側が弁償すべき費用は、汚してしまった物を汚れる前の状態に戻す「原状回復」にかかった費用です。店の責任もそこまでの範囲です。
そのため、原則として汚してしまった衣服はクリーニングで対応します。
汚してしまったお客様に対して、「怒ってなさそうだから」「ちょっとしかかかってないし」という店側の勝手な判断で何もしないのはNGです。
必ず責任者がクリーニング対応をさせて頂く旨を伝えます。
白洋舎の料金目安
衣類 | クリーニング代 |
ワイシャツ | 350円 |
スーツ上下 | 1,900円 |
ネクタイ | 450円 |
スカート | 600円 |
カーディガン | 1,050円 |
セーター | 600円 |
ダウンジャケット | 2,100円 |
コート | 1,900円 |
②その場でクリーニング代を渡す場合
ワイシャツやネクタイなどが軽度な汚れで済んだ時は、お客様が「これぐらいは大丈夫ですよ」と言ってくれる場合があります。
ですが、店側の落ち度でお客様の衣服を汚してしまった場合は、単に謝罪の言葉だけで済ませようとするのは良くありません。
軽度な汚れの場合はその場で封筒に1,000円を入れてお渡しし、クリーニングにお出し頂く事をお願いするのが良いでしょう。
「大変失礼致しました。こちら、ワイシャツのクリーニング代でございます。後日クリーニングにお出し頂いて、不足がございましたらお手数ですがこちらにご連絡くださいませ。」
金銭のやり取りは、食事の雰囲気を壊してしまう恐れがあります。その場は謝罪をして終え、席を立たれたり、お帰りの際にさりげなく伝えて、お渡しするのがベターです。
軽度な場合でもきちんと対応しないとね
③お店がクリーニングに持っていく場合
広範囲に、あるいは重度に汚してしまった場合は、まずはお店でお預かりしてクリーニング対応をさせて頂くことを申し出ます。
汚してしまった物をその場で預かることができた場合は、できるだけ早くクリーニングに出し、仕上がり日をお客様に連絡します。
安く抑えたという誤解を与えないよう、クリーニング会社やコースにも気配りをするとベターです。受付時に汚れを説明し、最適なコースを選択しましょう。
仕上がったら、状態を確認し、お客様に連絡します。店舗に取りに来て頂くのか、郵送をした方が良いのか、お客様にご提案します。
④お客様がクリーニングに持っていく場合
汚してしまった物によっては、その場でお預かりできない場合があります。また、お客様の希望でご自身でクリーニングに出したいと仰る場合もあります。
冬にコートを汚してしまった、カバンを汚してしまったなどです。また、高価な物やブランド物であれば、お店に預けるのを躊躇する人もいます。
そのような時は、お客様ご自身で後日クリーニングに出して頂く事を丁重にお願いし、その後の対応を説明します。
伝え方
「本日は大変失礼致しました。(本来であれば、こちらでお預かりして速やかにクリーニングにお出しなければならないのに、お客様にお手数をお掛けし、申し訳ございません。)クリーニングが仕上がりましたら、お手数ですがこちらにご連絡下さいませ。」
⑤その場で代替品を渡す場合
ビジネスマンのお客様のランチで、ワイシャツにコーヒーをこぼしてしまった場合など、汚れたままの服でお帰り頂く事が難しい場合はどうすれば良いのでしょうか。
そのようなクレーム対応の準備として、複数サイズのワイシャツを各1枚づつ常備している店舗もあるようです。
仮に「このワイシャツは特別なブランド物だ」と仰っても、代替品はあくまで、世間一般的な価格の物で対応して構いません。
代替品の提案がOKならば、速やかにクリーニングに出し、後日交換します。
⑥必ずお詫びの品を添える
クリーニングが完了した物を引き渡す際や、クリーニング代を郵送する時には+αでお詫びの品を添えます。
ただ原状回復させただけではお客様は納得しません。
ご迷惑を掛けた事、クリーニングをお待たせした事や、電話などのやりとりでお手数をお掛けした事に対するお詫びが必要です。高額でなくても構いません。
お詫びの品の例
1,000円程度のJCBギフト券
自社の無料券やクーポン
店頭で販売しているお土産
ギフト券は金券ショップやネットで購入できます
クリーニングで落ちなかった場合
衣服汚損はクリーニング対応で解決することがほとんどですが、汚損のレベルによってはクリーニングでは原状回復できない時があります。
その様な場合は次のような対応をする事になります。
①汚れた衣服の同程度の金額を弁償
ワイシャツやスカートなどの衣服の弁償の場合は同じ衣服か、同程度の衣服を購入できる金額をお渡しするのがベストな選択だと考えます。
お客様からそのような連絡を受けた時は、「申し訳ございませんでした。私どもの方で、同じ物を手配させて頂くか、相当分の金額をお支払いさせて頂きます。」と提案します。
②ブランド物・1点物の衣服の弁償
ブランド物や1点物で、汚れが落ちずに今後着る事ができないとなった場合は、弁償金額が高額になる事が予想されます。
ネットの情報では、車・バイク、時計・テレビなどの弁償は、買った当時の金額ではなく、相応の経年劣化や、現在の中古相場を加味した金額で構わないとされています。
そのため、「中古相場を調べて、その金額だけ払えばいいんだ」と勘違いする人がいますが、それは非常に危険です。
僕がお客様だと「この服は中古相場だと1,000円なので、その金額をお渡し致します。」なんて言われたら、腹が立ちます!
本当に謝罪をしているのか、疑ってしまうね。
上司や会社に相談し、適切な金額をよく検討する必要があります。
状況次第では、過剰要求ではない限り、購入金額をお支払いする方が良い事案もあります。
「ワニ革で職人オーダーメイドの靴」にワインをかけてしまい、クリーニングでもシミが取れなくなり、もう履けなくなった。
その場は店長が丁重にお詫びをし、話を伺った上で「上司・会社の本部にも報告し、改めてご連絡を差し上げます」と一旦お時間を頂く。
会社の本部がお客様にお詫びをする過程でお話を伺うと、確かにその職人が作ったもので、場所や金額も確認がとれたので、購入金額を全額を弁償すると決定。
対応にお時間を頂いたことや色々とお伺いをしてご不快な思いをお掛けした事に対しての菓子折りも持参して後日本部スタッフと店長が直接謝罪。
一方で、明らかに汚してしまった物と釣り合わない法外な金額を要求された際は、高額請求に応じる必要は無いといえるでしょう。
しかしその場合も、すぐに突っぱねるのではなく、お客様の話をよく伺った上で冷静に判断し、丁重にお伝えしなければいけません。
③手作りや思い出の品の弁償
高額ではなくても、手作りの服や思い出の服などを汚してしまうと、お客様のお怒りは「いくら」という金額の問題ではなくなる場合があります。
思い出を金額化する事はできませんし、こちらから安易に金額を提示する事は更なるクレームに発展する恐れがあります。
ブランド品よりもお怒りが収まりづらいですね…
その時は、同程度の服を購入できる金額(+α)をお渡しする以外は、誠心誠意、丁重にお詫びをするしかないと思われます。
衣服の弁償の金額+α(ギフト券10,000円分ぐらいでしょう)に加え、菓子折りなどを持参して直接お詫びに伺うなど、誠心誠意の謝罪の態度を示すことが大切です。
納得しない・過剰要求されるお客様には
①初めから、打算・早く終わらせたい感を出さない
「これぐらいの対応をしておけば大丈夫」という態度をとったり、「安く済まそうとする」ような話ぶりをすると、お客様はさらに怒りを感じ、2次クレームが発生します。
くれぐれも、クレーム対応をしている中で、「法律上、弁償はこの範囲でいいんですよ?」「その要求は犯罪ですよ」などと口走ってはいけません。
判断に迷った場合は、「上司・会社にも報告の上、対応させて頂きます。弁償などの内容を含め、改めてご連絡させて頂きますので、今しばらくお時間を頂戴できますでしょうか。」と伝えましょう。
②過剰要求には丁寧に説明し、応じない。
普通のワイシャツに、「迷惑料を合わせて、3万円払え!」って詰め寄られた時はどうすれば…
100%店側が悪いことに付け込み、過剰な金銭の要求をエスカレートさせるお客様には、毅然とした態度で拒否します。
また、そのような要求に安易に応じてしまう事で、今後も同じような金銭の要求が続いてしまう事があります。
チェーン店の場合は「〇〇店では対応してくれた。会社として対応がバラバラなのはどういう事か」と、新たにつけ入る隙を与える事になります。
焦らずに落ち着いて対応しよう
一通り、できる限りの対応をしたにも関わらず、不当な要求があった場合は
「申し訳ございません。『これ以上の対応や誠意を』という事であれば、致しかねます。」と切り出すのが良いでしょう。
それでも要求を続ける場合は
「申し訳ございません。これ以上、ご理解頂けないようであれば、上司・会社とも相談の上、改めてご連絡させて頂きたいと思います。」
と、連絡先を伺った上でその場をお引き取り頂くようにします。
店長が対応する必要は無いぞ。相手に丁寧に説明してから、上司や会社に対応を委ねるのが正解じゃぞ。
③割り切る事も大切
結局、「もう2度と行かないよ!」って言われて終わりました。
全てのクレームを円満に解決できることはないから、割り切る事も大切だ。
できる限りの対応をしても、最後まで対応に納得して頂けない人はいます。
精一杯対応しても、金銭的に納得しない方に対しては、割り切るしかありません。どこかで線引きをし、対応を完結させなければなりません。
それはそれと割り切り、今後どのようにすればクレームは発生しなかったのかを検証し、対策を立てる事に注力しましょう。
これを教訓に、お店としてレベルアップをすれば良いのだと思います。
まとめ
この記事では、飲食店で発生するぶっかけクレームを対応する中で、疑問に思ったり、対応に迷う恐れのある賠償・弁償の範囲について解説しました。
金銭的にいくらならOKだというマニュアル対応ではなく、できる限りお客様の要望に沿う形な何なのかを汲み取ることが大切です。
上司や会社と少しでも時間をとって、衣服汚損の賠償について話し合う機会を持ってみましょう!
とはいえ、過剰な金銭の要求には毅然と対応する、1人で判断せず、上司や会社に判断を仰ぐ旨をお客様にお伝えしましょう。
最後までご納得いただけないお客様がおられても、「仕方がない」と割り切り、どうやって今後に繋げるかに注力しよう。