「アルバイトが初日で辞めたいと言ってきた」「新人スタッフが2.3日で辞めてしまった」という経験がある人は少なくないでしょう。
あります…何が悪かったんだろうって思います…
高い求人広告費と貴重な面接時間を割いて、やっと採用したアルバイトさんにどうやったら定着してもらえるのかは、店にとって大きな課題です。
スタッフの早期退職を防ぐにはどうすれば良いのか。今回は「勤務初日のあるべきお店の対応」に着目して、解説してゆきます!
■飲食店で店長を10年以上経験している現役飲食店長です。
■飲食業界で働く人の悩みや不安を解消したい!
■飲食サービス業が大好き!魅力ややりがいを伝えたい!
■お客様、上司や部下、アルバイトさんと接した日々は宝物
勤務の初日が大切な理由
採用された新人さんは、不安や緊張を感じていると同時に、店の雰囲気や先輩スタッフの態度を良く見ています。
お互いが選ばれる立場であることを自覚して、アルバイトさんに接しなければいけません。
そのため、勤務初日の店側の対応はとても重要です。アンケートによると、アルバイトを辞めた理由として「周りの人の雰囲気が悪いから」を多くの人が挙げています。
第一印象は大切ですもんね
第一印象がネガティブなものだと、新しいスタッフはますます不安な気持ちになります。
「微妙だな…続けられないかも」と早期退職につながる可能性が高まります。
緊張や不安を取り除いて好印象を与えるためには何をすればいいのか、解説するよ!
「初出勤前の研修」を導入しよう
「初出勤前の研修」とは何か
初出勤前研修とは、採用(合格)の連絡をしてから初出勤日までの間に、一度、実際にお店に来てもらうワンクッションの1日のことです。
その日にやる事は、雇用契約書などの書類を作成をするだけでなく、店の理念や挨拶の仕方を伝えたり、店内の案内、出入り口や更衣室の説明などをします。
ワンクッションの1日は約1時間~1時間半で終わらせ、その分の時給も支払われる旨は本人に事前に伝えます。この日はそれで終わりです。
「書類の日」や「0.5日研修」とも呼ばれているね
初出勤前の研修でリラックス
アルバイトさんにとって初出勤日は心理的にも体力的にもストレスがかかります。
事前に働く場所を見学して「初日はここでこんなことをやってもらいますね」と説明する事で、心構えができ、リラックスして初日を迎える事ができます。
初出勤日に一気に教えればいいと思ってました
仕事を始める前に色々聞けると、緊張や不安が和らぐわね
人手不足で、すぐにでもシフトに入って欲しい気持ちは十分わかります。でも、一番大切な事は、その人がお店に定着し、戦力になってもらう事です。
そのためには、焦らずに丁寧な研修・教育をしなければいけません。
本人への伝え方
採用の連絡をした後に以下の内容を伝えます。
・実際に仕事を始める前に、お店で1時間半ぐらいの研修を行う
・研修内容は、お店や会社の事と、雇用契約などの書類の作成
・私服で構わない
・その時間の時給も出る
・持ち物(印鑑・給与の振込先・筆記用具・メモ帳)
それぐらい短い時間なら、お互い負担にならないね
初出勤日前の研修でやるべきこと
雇用契約書やその他書類への記入
・雇用契約書
雇用契約書は、労働トラブルを防ぐために、労働条件(時給・仕事内容・禁止事項・社会保険の有無など)をお互いに確認し合う書類です。
雇用契約書を交わす法律的な義務はありませんが、会社への信頼感(とりわけ学生アルバイトのご両親に対して)を高めることにもつながります。
・その他書類
本社に提出する書類があれば、まとめて初出勤日までに完成させましょう。出勤経路や雇用保険の書類などです。
高校生…両親の承諾を得ている確認の書類を渡し、初出勤日に持参してもらう。
留学生…3点セット(①パスポート②資格外活動許可証③在留カード)のコピー。
勤務当日にすると慌ただしくなっちゃいますよね
会社・お店のルールの説明
次に、会社やお店の理念・コンセプトを伝えます。「このお店(会社)は、お客様にどんなサービスを提供し、どんな思いで食事をして欲しい」といった内容です。
また、店長の思いや、仕事をうまく習得するコツや心構えを伝えるのも良いでしょう。
次に、一緒に働くうえで守ってほしいルールを説明します。全員が守っている決まりごとはきちんと新人さんにも伝えておきます。
・シフト関係 提出方法・提出期限や休む時などの連絡方法
・身だしなみ 髪の長さや色、束ね方、メイクの度合い
・服装 ユニフォームの有無や正日までに自分で用意する物を伝える。
・挨拶の仕方 ひとりひとりにするのか、挨拶をする決まった場所があるのかなど(場面ごとの定型文があれば説明)
初出勤の日までに伝えておきたい事だね
私は、ルールや理念に加え「挨拶の大切さ」「分からない事を素直に聞いてくれるとすごく嬉しい」「メモを積極的にとってほしい」などを伝えています。
店内の案内&紹介
次に、実際に店舗全体を案内します。
ホールスタッフならキッチンも、キッチンスタッフなら玄関から客席も全て見てもらうことで、働く職場の雰囲気をつかんでもらいます。
案内の注意事項
・キッチンやドリンク場・洗い場などの裏側も見てもらう
・トイレの場所 従業員トイレの有無
・出入口 従業員専用の出入り口や駐車場の有無
・お客さんの流れや料理の流れを何となくイメージしてもらう
・アルバイト本人がメインで作業する場所で、実際のイメージを伝える
案内をしている時に、先輩スタッフや社員に会った場合は、必ず店長が紹介してあげます。
「あ、〇〇さん、来週からホールスタッフで一緒に働く、□□さんです。宜しくお願いしますね☺」
「△△さん、来週からキッチンで働く□□さんです。たぶんシフト一緒になることが多いと思いますのでよろしくお願いします」
ワンクッションの1日、助かるわ~
初出勤日のシフトを確認して終わり
初出勤日は〇分前に来て欲しいこと、必要な持ち物があれば伝えます。研修の時間を作って来ていただいたことにお礼を言って、終了です。
これで初出勤当日はスムーズに進められるね
初出勤の日の注意点
初出勤をみんなに知らせておく
貼り出してるシフトに手書き、全体LINEがあれば送信しておくなどし、何時からどのポジションで新人さんが入るかを必ず知らせておきましょう。
先輩スタッフに「えっ?今日、新人さん入るの!?聞いてないですよ。まぁ…了解です。宜しくね。」と言われたら、新人さんは気まずすぎていられません。
少なくとも、当日一緒に働くメンバーには事前の連絡は必須です。
お互い気持ちよく初出勤日を迎えたいわよね!
準備物の確認
ユニフォーム・ロッカー・名札など、店側で用意する物はきちんと一式そろえて準備しておきます。
店長は、アルバイトさんからどんな職場かを見定められていることを自覚しましょう。
「なんだよ、ここ。全然ちゃんとしてねぇじゃん」と思われることの無いように。
必要なマニュアルや書類もそろえておきましょう。
手洗いや挨拶は100%の正しさを教える
着替えが終わったら「出勤の仕方」と「挨拶の仕方」を教えます。
会社や店によってタイムカードの押し方や手洗いの場所、挨拶のやり方は様々です。この店の100%正しいやり方をきちんと伝えます。
手洗いチェック、伝言ノートのチェックなど、目を通してサインするようなものもしっかり教えましょう。
雑に教えて、後で新人さんが叱られちゃ可哀そうよね
今日覚えて欲しい事を伝える
入店したての時期は覚えることばかりで、慣れない作業に苦労します。
「今日は〇〇と〇〇が出来るようになってほしいので、教えますね」と、出勤の都度、今日習得して欲しい事を明確に決めてあげましょう。
「色々やらせてるうちに勝手にできるようになってるから」はNGです。それで育つ人もいますが、多くの人にとってはストレスです。
覚えるべきことや習得するべき作業が順序立てて明確になっていることで、新人さんも成長を実感します。
自分の店オリジナルの新人さんの教育スケジュールを作成しよう
メモを取らせる
人間は、覚えたつもりでも絶対に忘れてしまう生き物です。メモをしていれば、忘れても見返せますし、確認もできるので、メモは重要です。
よく「説明してるのに、メモを取ろうとしないのよ。ちゃんと覚えてるのかしら…」とグチる先輩がいますが、少し考え方を変えましょう。
学生さんやアルバイトが初めての人は、メモをとる習慣そのものが身に付いていません。
「じゃあ、これから〇〇のやり方を説明します。ちょっとややこしいからメモしながら聞いてね。」と、自然にメモを促してこそデキる先輩です。
メモを取ってもらっている方がやる気を感じるわよね
ペアを組ませる(一人にしない)
新人さんが「分からないことがあるけど、どうすればいいんだろう」という状況にさせないことが重要です。
教え慣れたスタッフや年齢が近いスタッフをペアにする場合が多くみられます。
また、ペアになったスタッフ以外の人も、何か気付いたことがあれば新人さんにアドバイスをしてあげるような雰囲気はとても大切です。
「〇〇さんが教育担当だから、私は関係ない」「〇〇さんから教えてもらってないの!?」といった環境にならないように注意しましょう。
教育係の押し付け合いにならないような配慮も必要だね
先輩・店長が教えるときの注意点
必ずコメントをしてあげる
新人さんの仕事や作業を「良い・もう少し・改善点はここ」ときちんと評価をしてあげることは本人のメンタルヘルスにとって非常に大切です。
良ければ本人の自信になります。改善点を指摘されれば次からできるようになります。そうする事で、どの作業をどのレベルでこなすのかを理解してゆきます。
ちょっとした作業にもコメントしてあげましょう!
また「慣れてきましたね」「もう完璧ですね」など、成長の変化を伝えることで、新人スタッフのモチベーションを高めることができます。
教えてないのに怒らない
当然ですが、教えられていない事はできません。また、教えていない事をあやふやなままやらせてはいけません。
「考えたら分かるじゃない」はNGです。教えられておらず、基準が曖昧のままで間違えれば、お客様に迷惑がかかります。
新人さんに「これってやったことある?」「教えてもらった?」と確認し、「じゃあ、今日やってみましょうか」と教えれば良いのです。
店長だけでなく、全ての先輩スタッフが意識したいところ
教え過ぎない
仕事がデキる先輩ほど「別の場合はこう」「ごくまれに〇〇になるから、こうしてね」などと、例外やレアケースを教えたくなってしまいます。
その時になれば先輩に聞けばいいことまで教えられ、いっぱいいっぱいになってしまいます。先の事まで知識だけを詰め込む教え方はNGです。
新人さんの目標は、あくまで基本の接客や作業を適切なスピードでこなすことです。
新人さんには、OJTやシュミレーションで基本の反復練習を繰り返すことを優先させましょう。
飲食店の「最適な教え方」の記事も参考にしよう!
初日の勤務が終わったら
感想を聞いてフォロー
「どうでしたか?初日は」と率直に感想を聞きます。
「覚えること多いですね…」「結構忙しいですね…」と凹んでいるような感想であれば、その部分をフォローします。
そして褒めます。頑張っていたところや、上手くできていたところなどを具体的に褒めることがポイントです。
次回出勤日の確認
次回のシフトを確認して終了です。
店舗の規模が大きく、教育係のスタッフに任せていた時間が多ければ、そのスタッフに新人さんの様子がどうであったか聞きます。
新人さんも、店長も、お疲れさまでした!
まとめ
多くの求人の中から自分の店を選んでくれた人には、会社側・店側もしっかりと向き合うことが重要です。
「ちゃんとしてるな」「続けていけそう」と感じてもらうことが、店舗に人財が定着する第一歩です。しっかりとコミュニケーションを取りましょう。
実は「初出勤日前の研修」にはデメリットもあります
・「もっと気楽に、楽しくノリ良く働きたい人」にとっては窮屈に感じる
・別日で時間を割くのが手間に感じる
・「個人経営だし、ここまで大層にするほどでもない」という方もおられます。
お店の新人採用・新人教育は店長の考え方次第ですね!