飲食業界は、全産業の中で年収が低い業界であると言われていますが、年収やボーナスはいくらぐらいなのでしょうか。
また、大手企業と中小企業、一般社員と店長では、年収はどれほど違うのでしょうか。
企業規模や役職による差も気になります…
これから飲食業界で働きたいと考えている人だけでなく、今まさに飲食業界で働いている人も、気になりますよね。
この記事では、各調査やアンケートをもとに、飲食業界で働く正社員の年収やボーナスの水準を紹介します。
飲食店の社員の平均年収は317万円
飲食店 労働者の平均年収
平均年収 | 317万円 |
月収 | 26万円 |
ボーナス | 10万円 |
平均年齢 | 43.2歳 |
平均勤続年数 | 10.7年 |
(全産業平均) | (433万円) |
厚生労働省 令和3年賃金構造基本統計調査
全産業平均を下回っているんですね…
ですが、年収・月収は、従事する会社の経営規模や勤続年数・役職によって大きな幅があります。
さらに飲食業界は、企業規模・役職だけでなく、扱う業態(居酒屋か、カフェか、フレンチか…)によっても、年収が大きく変わる業界です。
働くスタイルも多岐に渡ります。ボーナスなど福利厚生を重視して大手企業に勤める人もいれば、独立開業を果たしてオーナーとして成功する人もいます。
飲食業界といっても働き方で年収は大きく変わりそうだね
企業規模による年収の差
大手飲食チェーン社員の平均年収
従業員1,000人以上の大企業の社員の平均年収は以下の通りです。
345万円(1,000人以上規模の事業所)
産業全体平均…433万円
新入社員を含むすべての従業員の平均であること、離職率が高く、年収の低い若年層が多いことも平均値を押し下げている要因であるといわれています。
大手企業といっても飲食業全体の平均とそんなに変わらない…?
大手企業の場合、店長や調理長など、役職に就くことで年収が大きくあがる傾向にあります。
飲食業界で年収が高い企業
順位 | 企業名 | 平均年収(万円) |
---|---|---|
1 | コメダHD | 957 |
2 | BRサーティーワンアイスクリーム | 755 |
3 | FOOD&LIFE Companies | 751 |
4 | 日本KFC HD | 724 |
5 | トリドール HD | 724 |
6 | 吉野家 HD | 706 |
7 | サンマルク HD | 684 |
8 | ダスキン | 683 |
9 | WDI | 675 |
10 | SRS HD | 674 |
50位までを見ても、社員の平均年収は500万円を超えており、飲食業界の平均年収よりもかなり高い水準となっています。(50位までのランキングはこちら:業界動向サーチ)
社内でキャリアを積み、店長などの役職に就ければ年収が500万円~というケースもあり、全産業平均の年収額を上回る高水準となることもあります。
中小規模飲食チェーンの賃金水準
飲食サービス業における小・中規模企業の賃金水準は以下の通りです。
10~99人規模…286万円
100~999人規模…301万円
中小企業規模の給与は、大企業と比べると以下のような水準であると言われています。
大企業を100とした場合、
男性…87.7%・女性…93.6%(平均年齢40代前半)
厚生労働省 令和3年賃金構造基本統計調査
企業規模による差は女性の方が少ないんだね
ですが、中小規模であっても、業態や出店している地域などによっては、大企業と同じレベルの賃金水準の企業も多数あります。
また、10代は99.3%・20代は95.2%という差になっており、勤続年数が長くなるにつれて差が広がる状態となっています。
新入社員の時は大企業と変わりないんだな
個人経営者とその社員の年収
【個人経営者】
個人経営者の年収は560万円~620万円と言われています。
しかし、立地や業態・店舗数によって、赤字経営で一年以内に倒産するケースから年収数千万円を得られるケースまで非常に幅広い状態です。
売上(年商)から人件費や家賃など全てのコストを引いた残りの金額が経営者の年収になるため、経営に対する高い管理スキルが求められます。
繁盛店を作り上げるための様々な努力が必要じゃ
また、コメダ珈琲やココ壱番屋などで有名な「フランチャイズ店舗オーナー」として多店舗展開する個人経営者もいます。
営業に関するノウハウは研修でしっかりと身に付けることができますが、大手チェーン店の看板の力に甘える事のない、1人の経営者としての覚悟が必要です。
また、「売上の〇%のライセンス料」であったり「1日1席×〇円分の金額」を本部に収める必要があり、こちらも経営に関する数値管理スキルが必要になります。
売上と利益率が自分の年収に直結するんだ!
【個人経営者の社員】
個人経営者の元で働く場合、給料は店舗ごとに大きく異なります。 大手のように細かな給与体系が決まっておらず、利益率で給与が決まることが多いからです。
売上がある繁盛店や人気店では、業界の平均以上の給料が支払われる場合もあります。
一方で、大手企業とは異なり、手当がほとんど支給されない場合もまれにあります。自分で支払う時は、手取り給与額からさらに減ることになります。
しかし、経営者の理念に共感し、一から会社を作り上げるやりがいは代え難いものです。多店舗展開できれば幹部となって経営に携われることもあります。
大手企業にはない魅力もあるんだね!
勤続年数は関係ない?
新入社員の給与
飲食店の社員の初任給は「大卒22万円前後」「高卒18万円前後」である場合が多いです。
ゼンショーHD…初任給22万円(学部卒)
すかいらーくHD…初任給21万8千円
全業界平均の「大卒23.3万円」「高卒18.8万円」と比べても大きな差はありません。
長く勤める‟だけでは”年収は上がりにくい
【中規模・大手企業の場合】
飲食店社員は公務員のように「ただ勤続年数を経るだけで給与が上がり続ける」ということは少ないです。
勤続年数に比例して習得する技術や経験値に応じたポジション・役職に就くことで年収が上ってゆきます。これは民間企業であればどこも同じであると言えます。
社内の昇進制度に従って、例えば「主任→副店長→店長・調理長」などの役職につくことで月収が上がります。
特に大手企業の場合は経験を積むにつれ、給与は確実に上がっていきます。特に20代後半~30代は責任ある役職に就くことが多く、年収が大きくアップする傾向にあります。
経験やスキルが社内で評価され始めるんだね!
【個人経営企業の社員の場合】
一方で、小企業や個人オーナーの飲食店の場合は、何年勤めても給料が上がらないというケースも見られます。
ですが、繁盛店・人気店を作り上げることができれば、その成果として大幅な給与アップが見込めます。
また、独立開業を目指して、数年間は低収入であっても職人の元で修業・下積みとして働く人もいます。
近年では人手不足から労働環境や給与の見直しを計っている企業も多くなっています。給与形態がどのようになっているかを確認することが大切です。
ボーナス(賞与)
ボーナスとは、年末や夏期に、正規の給与以外に特別に支払われる賃金で、賞与金とも言われます。年2回の支給が一般的です。
5人以上の事業所の平均(大手企業含む)…4万7000円
大手企業のみ平均…27~30万円
会社の規模によって大きな差があるんですね!
大手企業でも20代では18万円~20万円が多く、勤続年数や役職によって金額が変わります。
また、労働基準法で支払いが義務付けられていないため、賞与そのものがない会社もあります。賞与を支給している事業所の割合は以下の通りです。
飲食サービス業…42.7%
全産業平均…65.1%
厚生労働省 令和3年夏季賞与特別調査
中小規模も含めるとボーナスがある会社は少ないんだね
大企業では『賞与年2回』などと求人要綱に明記されています。その場合は金額の多少はあれど、きちんと支払われます。
・一律定額型・・・役職者は一律25万円、一般職は一律10万円と定額支給
・給与連動型・・・基本給と連動して支給(例:基本給×1.5ヶ月)
・利益配分型・・・事前に会社全体でボーナスとして支給できる額を決め、従業員の能力に応じて分配する
飲食サービス業界は「利益配分型」の決定方法である会社がほとんどです。コロナ禍では、業績が厳しい期間が続き、金額が低く抑えられる時期が続きました。
役職による年収の差
一般社員と、「店長」「マネージャー」など役職がある人の年収はどれぐらい違うのでしょうか。
「店長」になったら
店長は自分の店舗の責任者として、目標の利益を達成するために店舗運営をするのが仕事です。売上・経費の管理や、月数回の会議や資料作成をこなします。
一般社員の給与平均は317万円だったね
中小規模平均 330万~360万円
大手企業の店長は500万~600万円を超えることも
目安として一般社員よりも2~5万円ほど高くなっています。月収は25~35万で、社会保険料や税金が4~5万円引かれた分が手取りとなります。
「マネージャー」になったら
マネージャーは現場の業務を離れ、複数店舗の売り上げ管理や状態管理を行います。現場の店長に指示を出し、担当するエリア全体の業績を上げるのが仕事です。
本社や各店舗とのミーティングをこなし、担当エリアの店長や従業員をあるべき姿に導くための指導力・経験値・経営判断力が求められます。
380万~600万円
大手企業のエリアマネージャーは600万~800万円を超えることも
基本的には店長の年収の延長にあるという印象ですが、会社の規模や担当するエリア・店舗数によって大きく異なります。
年収を上げるには?
個人経営…売上を上げる
個人経営の飲食店であれば、売上を上げて経費を下げる事に注力すれば、その分の利益が自身の年収に直結します。
逆に大手チェーン店では、売上や利益をどれだけ上げても給与は一定です。
人気店・繁盛店を作り上げることは簡単な事ではありませんが、実現すれば自身の年収を大幅に上げることができます。
自分の努力がそのまま成果になるんだね
転職をする
同じ飲食店でも、企業規模や業態によって給与は大きく変わります。そのため、ある程度スキルや経験を積んだ段階で転職をする事も一つの選択肢です。
個人店→中小規模企業→大企業への転職によってより大幅な年収アップを実現させることが可能です。
特に、大手企業は福利厚生(残業・休日手当、家族手当などの各種手当)が整っており、昇給制度やボーナス制度も充実しています。
さらに近年では、大都市圏や海外にチェーン展開が加速している企業は、店舗を増やしたいが人材不足という状況にあります。
年収を上げるステップアップ転職のチャンスですね!
また、カフェ業態よりレストラン(和食・フレンチなど)といった客単価の高い飲食業態の方が給料が高くなります。その分求められるスキルも高くなりますが、思い切って飛び込んでみるのも一つです。
転職は年収をあげる最大のアクションじゃ!
人によっては、「今いる会社にお世話になっているから…」や「自分が抜けたら大変になるかも」という理由で転職に消極的になってしまうことがあります。
また、「自分にはスキルや経験が無いから」「ひとつの業態しかやってこなかったから」と、自分に自信が持てずに転職を躊躇してしまうこともあります。
その気持ちはすごく分かります!
転職に不安がある人は、まずはどのような求人があるのか、自分のスキルでどこまで年収が上げられるのか、転職エージェントに相談してみるのがおススメです。
昇進する・役職に就く
転職はせずに、今の会社で年収を上げるためには、店長やマネジャーなどの役職につくことが必要です。
店長に就くためには普段の勤務態度やモチベーションなどが上司に評価され、「次に誰か店長を選ぶとしたら〇〇君だな」と認められる必要があります。
マネージャーに選ばれるためには、店長の時の実績に加え、人間性・判断力・数値管理能力など様々な評価がカギとなります。派閥争いがあるなんて企業も…
どの企業でも狭き門ですが、年収を上げるためにはトライしたいところです。
これまでの行動や実績が評価されるのは嬉しいね
また、役職のポジションの数は大手企業ほど多いので、現在中小規模企業の店長・マネージャーをしている人は、転職通じてさらなるステップアップを実現させる事もできます。
社内規定の資格手当をチェック
大手企業には「この資格を取得すれば月〇円支給」といった資格手当があります。資格手当の存在すら知らない人も多いので、一度確認してみましょう。
資格は難易度や会社への貢献度によって月数千円~数万円まで様々です。ちりも積もれば大幅な年収アップに繋がります。
月の給与がアップするだけでなく、転職にも有利になります。また、社内での昇進昇格の際に一定の資格取得を条件にしている企業もあります。
まずは何かひとつ資格に挑戦してみよう!
飲食店の年収アップ・転職に有利な資格10選の記事を見る。
まとめ
飲食業は労働集約型です。経費を抑えて利益を出すために、人件費を他産業より低い水準に抑えることで成り立っている業界であるといえます。
しかし一方で、従来の「やりがい搾取」「ブラック体質」を見直し、従業員満足度に重点を置いた企業も増え始めています。
飲食業界で働く魅力は給与だけではありません。しかしながら、給与・年収こそ、自身の生活を支える最低限の土台であることは揺るぎません。
この記事が、これから飲食業界で働きたいと考えている人だけでなく、今まさに飲食業界で働いている人で、年収やボーナスに不満がある、モヤモヤしているという方の参考になれば幸いです。