飲食店の店長をしていると、超重要なキーワードとして良く出てくる「QSCA」というアルファベット。
超重要な理由はQSCAは店舗の売上に直結するからです。
あなたのお店は高いQSCAを提供できていますか?
■飲食店で店長を10年以上経験している現役飲食店長です。
■飲食業界で働く人の悩みや不安を解消したい!
■飲食サービス業が大好き!魅力ややりがいを伝えたい!
■お客様、上司や部下、アルバイトさんと接した日々は宝物
この記事の前半ではQSCAとは何かを解説します。記事の後半では「顧客感動を生み出す」といわれている「H」「V」「B」を解説します。
HVBっ何ですか!?顧客感動!?
今更聞けない!売上に直結するQSCとは?
「QSCA」で顧客満足が高まる
「QSCAレベル」とは以下のことです。
Q:クオリティー…主に料理の品質
S:サービス…主に接客のレベル
C:クリンネス…店舗の清潔さ
A:アトモスフィア…店舗の雰囲気
QSCAに取り組む理由は
顧客満足度を上げて、リピーターを獲得するため
飲食店の客数は「新規3割 リピーター7割が理想」と言われています。安定した営業をするためには、リピーターをどれだけ獲得するかが非常に大切です。
そのためのQSCAなんだね!
それぞれの項目が具体的にどのようなモノなのかを理解し、どうやって高めていくか作戦をたてて実行するのが店長の仕事です。
Q 料理の質
高級食材を使えば料理のクオリティが高まる、というものではありません。クオリティーは、味付けや見た目だけでなく、様々な基準で判断されます。
料理の質を決める要素
味付け 盛付け 食材のレベル(高級・希少・旬) 食材の鮮度 料理の温度 ボリューム(コスパ) 職人の技術や手間を感じさせる
また、提供されるまでのスピードも重要です。スピードと品質は違うでしょ?と思われるかもしれませんが、料理全体の満足を判断する重要な要素です。
料理が遅いと、せっかくの味や盛付にも興ざめするわよね。
S 接客の質
料理だけでなく、接客の印象も「もう一度この店に来たい」を左右する大切な要素です。
一方で「無愛想だ」「レジの応対が最悪」など、厳しい意見が口コミサイトに書かれる時代です。料理だけでなく、接客の質にもこだわりましょう。
接客の質って、具体的には何を指すのかしら
接客の質を決める要素
正確さ 笑顔 スピード 丁寧さ(言葉使い・立ち振舞い)気配り
店長は、自分の店に求める接客のレベルを明確にして、全員で共有する必要があります。コアな客層や料理の単価に合った接客が求められます。
接客を理想のレベルまで引き上げるために、ミーティングやトレーニングを重ねます。
C 店舗の清潔さ
クリンネスは衛生・清潔に関する基準です。飲食店の安心・安全にかかわる部分なので、お客様の信頼を裏切ることが無いように常に意識しましょう。
食事を楽しむ場所です。常にピカピカに!
衛生・清潔の注意点
テーブル周り(メニュー・カスターセットも) 店内の床 壁や天井(ホコリ・クモの巣) トイレ(清掃チェックの漏れ) 看板やのれんの汚れ エアコンの吹き出し口…
などなど、細かくあげればキリがありません。日々働いてるスタッフだからこそ当たり前になって気付きにくい部分には特に目を配りましょう。
のれんの交換やエアコンの清掃などは、汚れに気付いてから対応していませんか。定期清掃表にまとめ、常にきれいな状態が保たれるようにしましょう。
A 店舗の雰囲気
・快適な空間の維持
最低限の快適な空間が整っていなければ、たとえ料理と接客が素晴らしくても、途端に興ざめしてしまいます。
快適な空間の維持
店内の照明 店内掲示物(かたむき・はがれ・色褪せ) 椅子や座布団のゆがみ 陳列物のゆがみ お客様の視界からバックヤードの散らかりが見える など…
店長は基準を明確にし、できていない時はすぐに指導をしなければなりません。
基本的なことだけど、うっかりしちゃうわね…
・魅力的な雰囲気の演出
店のコンセプトによって、演出の取り組み方は違います。会社の方針や店長の想いに沿って、空間全体から細かな小物の配置までこだわりましょう。
魅力的な雰囲気の演出
玄関・入り口の演出 店内照明(色合い・明暗度) 店内音楽 季節感のあるディスプレイ 調度品小物類 装飾品 魅せる食器・グラス
店の雰囲気とは、例えば「落ち着く⇔賑やか」「古き良き⇔近未来感」「季節を感じる⇔無機質」など、居心地の良さの種類の事です。
店内デザイン・照明・音楽は空間そのものを作る要素、季節のディスプレイや装飾の小物・絵画などの調度品は雰囲気を補完する要素です。
料理や接客と同じぐらい大切な要素です。
QSCAがどのようなものか、理解できました!
顧客感動を生み出すH.V.Bとは
近年、「QSCA+H」「QSCA+V」「QSCA+B」という表現がみられます。
H:ホスピタリティー…おもてなし、思いやり
V:バリュー…付加価値
B:ブランド…店への感情移入
「H.V.B」の要素は、QSCにプラスする事で、顧客満足では感じない、より高いレベルの感情をお客様の心に芽生えさせることができます。
それが「顧客感動」です。お客様は、お店に対してそのような感情を抱くことで、より強いファン・ヘビーユーザーへと変化してゆきます。
H:おもてなし、思いやり
S:サービスとH:ホスピタリティはどう違うのかしら
S:サービス…「正確、適切、笑顔、スピーディー」です。これらが維持されている接客では、顧客満足が感じられます。
ホスピタリティのある接客
心配りのある配慮 優先順位の把握 客層に合わせた接客 利用動機に合った接客 パーソナルな絆 など
ホスピタリティがある接客では、顧客満足を超えて、顧客感動を与えることができます。
スタッフ個人のポテンシャルに左右されないかしら…
課題は、経験豊富でモチベーションの高いスッタフと新人スタッフでは、ホスピタリティのレベルに大きな差が出てしまうことです。
個人の力に頼ると「あの人は(あの時は)してくれたのに…」と、接遇にムラができてしまい、お客様の期待を裏切ることにつながります。
自分のお店は何をどこまでやるのか、方針を示そう!
V:付加価値
付加価値とは、「他(ライバル)とは違う独自の価値を付与する事」。つまり「この店でしか味わう事のできない何か」です。
例えば、この店でしか味わえない素材・料理がある、この店の接客は別格だ、他の店よりくつろげる雰囲気…といったものが付加価値となります。
個人経営であれば、どのように差別化するかを、チェーンの飲食店であれば、自社の魅力とは何かを再認識することで、付加価値が見えてきます。
高い付加価値を提供できれば‟選ばれるお店”になれるんじゃ
B:感情を満たす
ブランド力のある飲食店とは、そのお店で食事をする事で満たされる特別な感情がお客様の中にあること、そしてそれが強く支持されているお店です。
そもそもブランドの本来の意味は「銘柄・印・品種」などですが、転じて、そのような銘柄や印と結びついた「イメージ」「感情」の事を指します。
顧客はブランド品を手に入れることで、そのブランドのイメージと同等の評価を他者から得ることができる、あるいは自己満足的に欲求が満たされます。
「〇〇を持っている人はこうだ、だからあの人は…」というイメージだね。
一般的なブランドイメージ
高価(値段が高い) 高級(品質が良い) 希少性を感じる 悠久の歴史がある 洗練された かわいい クール 特定の国や地域・時代の魅力が思い浮かぶ など…
近年ではSDG’sやLGBTへの取組みがブランドイメージに結びつくこともあり、企業活動そのものがブランド力を持つようになっています。
飲食店では、どのようなブランドがあるのでしょうか
飲食店のブランドイメージ
創業〇年の老舗 高級感 最先端 環境に配慮した 地産地消にこだわった 特定の国・地方の魅力を感じる など…
ブランドが持つイメージや、ブランドを利用した時に生まれる感情が、お客様からのゆるぎない支持を得ることにつながるのです。
QSCA・HVBの注意点
顧客のニーズに合わせる
今のレベルのQCSAで良いのか、より高いレベルのQSCA追求するのか、という判断をするのは店長の重要な仕事です。
自分の会社・店舗の「客層」「店の利用動機」「価格帯」などよって達成するべき顧客満足の内容は異なるからです。
顧客のニーズとズレてしまうと今までの顧客が離れてしまいます。よかれと思って取り組んだことが、お客様の不満につながってしまうこともあります。
お店の強みがより高まるような事を考えるんだ!
スタッフの負担を考える
課題と問題意識をもってQSCを上げようとしても、急激な変化はお客様にとっては良くても、スタッフにとっては大きな負担になります。
店長が独断専行でQSCを上げようとしても、絶対に実現しません。一時はQSCが上がったように見えても、決して持続しません。
「なぜこれに取り組むのか」「代わりに、やらなくて良い事を決める」など、今いるメンバーとよくミーティングをすることを忘れないようにしましょう。
実行するのは私たちなんだもの
適正な利益を得る
ホスピタリティ、付加価値、ブランド力向上というのは、安さ重視の価格競争から抜け出すための取組みです。
「このサービス、この料理でこの価格!」というのも魅力的ですが、付加価値のあるサービスや料理にはしっかりと報酬を頂戴するべきでしょう。
頑張り損になってしまわないようにしなきゃ
まずは、できる事から始めよう
「顧客感動を与えるハイレベルなおもてなしって何だ?」「高級食材を仕入れるルートもお金も無いよ…」と、難しく考えなくても大丈夫です。
例えば、今の料理の完成度がもっと高まる取り組み(熱々・キンキンなど)をするだけで、値段以上の満足を感じてもらえるかもしれません。
お子様・妊婦・ご高齢の方へのちょっとした声掛けや気配りに取り組むことで、「ぜひ、また来よう」と思ってもらえるかもしれません。
コストをかけなくても、働く人の意識と行動を変えることで、QSCを上げることができます。
すぐに始めることが大切なんですね!
まとめ
この記事では、飲食店の経営でよく言われるQSCAとは何かを紹介しました。また、顧客感動を与えるためのH、V、Bについても解説しました。
飲食店にとって顧客満足度を上げてリピーターを獲得することは非常に重要な課題です。QSCAは、そのための大切な要素です。
自分の店で何がどこまでできるのかをよく判断した上で、お客様により高い満足を感じてもらうために取り組んでゆきましょう!