飲食店店長の仕事の中でも、クレーム処理は精神的にキツく、時間もとられる大変な業務です。
特に「謝罪文を書く」「謝罪のメールを送る」対応は特に頭を悩ませます。
すぐに返事をしたいけど、失礼のない書き方が分からない…
ネットの例文は自分のケースに当てはまらない・簡潔すぎて気持ちが伝わらなさそうなど、参考になりづらい場合もありますよね。
この記事では、基本的な謝罪文の流れと、色んなケースを想定した上で、できるだけ丁寧な謝罪文の書き方を紹介します。
■飲食店で店長を10年以上経験している現役飲食店長です。
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■お客様、上司や部下、アルバイトさんと接した日々は宝物
クレーム対応は誠実さとスピードが大切。
この記事を参考に、実際のクレームに沿った内容を盛り込みながら謝罪文を完成させましょう!
謝罪文が必要な場面
お客様相談室などのメールへの返信
謝罪文作成で一番多いのは「お客様相談室」に寄せられたクレームへの返信です。
お客様が、直接言えなかったけれど、後になって怒りがこみ上げたりしてお客様相談室に書き込んだ場合です。
当時の状況やお客様の要望をよく判断しないと
メールの返信はできるだけ早く(おおむね24時間以内)することが重要です。
お詫びの品などに添える時
クリーニング代や会計ミスの返金分を現金書留で郵送する場合、代金だけがチャリンと入った封筒が送られてきたら、相手はどう感じるでしょうか。
割引券やお詫びの品をお送りする時も同様です。謝罪文がなければ、誠意も何も感じられません。
いかにも面倒臭そうで反省をしていない態度に感じるわね。
すでに電話のやりとりなどでも何度もお詫びをしていたとしても、改めて謝罪文を書いて同封しなければいけません。
謝罪文・謝罪メールを書き始めよう
来店したのが初めての方
初めて・かなり久々の利用の場合はそれに応じた文章にします。
〇〇様
先日は、食事処△△ □□店にご予約、ご来店頂き、誠にありがとうございます。
□□店 店長の山田と申します。
何度か利用されている方
常連様や、定期的に利用して頂いているお客様の場合は「平素より~」と始めます。
〇〇様
平素より、食事処△△ □□店をご利用頂き、厚く御礼申し上げます。
□□店 店長の山田と申します。
「この度は~」で謝罪の本題に入る
「この度は」の前に必要な文章
お客様相談室へのメールの返信など、初めてクレームの相手に連絡をする時は、「この度は~」の前に以下のようなひと言を入れましょう。
・〇〇様よりお送り頂きました、弊社お客様相談室へのメールを拝見致しました。
・先日ご来店頂いた際の、〇〇様への衣服汚損について、当日の責任者である●●より聴取を致しました。
より誠実な印象が感じられるね
この度は~と本題に入る
店側が、お客様に対してどのようなミスをして、どのような被害を与えたのか・どのような思いをさせてしまったかを書きましょう。
この度は、当店スタッフの玄関での案内の不手際により、〇〇様、またご家族皆様(ご一同様)に大変ご不快な思いをお掛け致しました。誠に申し訳ございません。
この度は、当店スタッフの料理提供時の不注意により、〇〇様の大切なお召し物を汚損させ、多大なるご迷惑をお掛け致しました。誠に申し訳ございません。
「それだけじゃない被害」があれば言及
「家族の祝いの席を台無しにした」「重要な接待だったのに」のような、スタッフのミスによって、宴席そのものを台無しにしてしまった場合です。
文章の中でそういった被害にもにきちんと触れておくことで、より謝罪の誠意を感じて頂くことに繋がります。「また、~」と続けます。
明確な利用動機が分かっていれば必ず言及するんじゃ
また、この日のお食事は、ご長男様の合格祝いでのご利用であったと伺っております。皆様の一生に一度の大切なお席を台無しにしてしまった事、重ねてお詫び申し上げます。誠に申し訳ございません。
「本来であれば~」で気持ちに寄り添う
クレームは「お客様の期待値とのギャップが大きい時」や「当然〇〇すべき場合に、そうならなかった時」に発生します。
「本来であれば〇〇があるべき接客・料理・店の状態であるにもかかわらず~」となります。
お客様の言い分を理解し、私たちがどうするべきだったかを書こう
本来であれば、記入されたお名前と案内済みのお客様の名前を常に照らし合わせながらご案内をしなければなりません。
また、お客様からご指摘があった場合には真摯な謝罪をすることが当然のことでございます。
「にもかかわらず」で改めて謝罪を述べる
何が悪かったのかを書き、謝罪します。お客様が怒っている理由、わざわざご意見を寄せて頂いている理由に寄り添った文章にします。
にもかかわらず、案内担当者がチェックを怠り、また、お客様からのご指摘にもまるで聞き流すような態度をとっておりました。
〇〇様には大変ご不快な思いをお掛け致しました事、改めて深くお詫び申し上げます。
ここを勘違いすると「そういうことじゃない!」と2次クレームになります
ちなみに、漢字は「×関わらず」ではなく「〇拘わらず」が正解。ひらがなで構いません。
「~につきましては」で改善策を書く
起きてしまったクレームに対しての改善策を書き、結びへ向かいます。
スタッフ個人へのクレームの場合
接客態度に関するクレームは、該当者個人への注意をすでに促していることが必要です。
当該のスタッフには昨日個人的にミーティングを行い、混雑時の案内の確認と接客態度に関して厳重に注意を致しました。
これがないとすっきりしないわよね
店全体の失態の場合
衛生管理・料理の質やスピード・本社のシステムやホームページといった事がクレームの原因となっている場合は、それぞれ具体的な解決策を書きます。
・今回の件につきましては、調理部門の責任者と即時ミーティングを行い、改めて〇〇と〇〇を再度徹底してまいります。
・今回の件につきましては、貴重なご意見として弊社本部の〇〇部の責任者にも報告をし、改善を促して参ります。
「会社のルールだから仕方ないんです」では納得して頂けないぞ
「今後は~」で締めに入る
今後はどのような店づくりをしてゆくかを簡潔に述べます。
・今後は、お客様に快適にお食事を楽しんで頂けるよう、店一丸となって接遇教育・従業員教育に邁進してゆく所存でございます。
・今後は、お客様の安心・安全の信頼に応えられるよう、店一丸となって衛生管理の徹底に取り組んで参ります。
謝罪文には、この部分も必ず盛り込もう
最後は軽めの謝罪で締める
同封しているものがあれば一言
返金分の現金やお詫びの割引券など、手紙と一緒に同封している物品があれば書きます。
・最後に、〇〇様のお会計の間違いで多く頂戴しておりました950円と、系列店でもご利用頂ける割引券を同封しております。
本来であれば直接お会いしてお渡しするべきところ、郵送でのご対応となりました事、ご容赦下さいませ。ささやかではございますがお納め下さい。
最後のお詫びと役職・氏名
最後にもう一度謝罪の言葉を書きます。
接客態度・店内の清掃やサービスへのお叱りや疑問の声であれば、貴重なご意見を寄せて頂いたことへの感謝があると丁寧です。
最後に、貴重なご意見を寄せて頂きましたことに感謝申し上げると共に、改めてお詫び申し上げます。この度は、誠に申し訳ございませんでした。
食事処△△ □□店 店長 山田 太郎
衣服の汚損・異物混入など、直接的な被害を訴えている場合はクレームが寄せられるのは当然のことです。
「ご意見を頂き、感謝申し上げます」などは開き直っているような印象を与える可能性があるため省き、簡単な謝罪で締めます。
この度は、誠に申し訳ございませんでした。
食事処△△ □□店 店長 山田 太郎
以上が謝罪文の全体の流れと注意点です。
完成した段階で一度上司に確認をしてもらうと安心じゃ!
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お詫びの品に添える謝罪文の例 ※使う状況に注意!
お詫びの品や返金分の現金などを郵送する時は、何のメッセージもなくその物だけを送るのは絶対にNGです。
一通り謝罪が済んでいる場合は、上記のような丁寧な謝罪文ではなく、軽く添える程度の謝罪文でも構いません。
最後まで気を抜かないようにね
逆に、まだ謝罪ができていない、原因・再発防止などを伝えていない場合は、この記事の流れにのっとった丁寧な謝罪文の方が望ましいでしょう。
手書きの場合の注意点
修正ペンや修正テープはNG
謝罪文を便箋に手書きする場合、鉛筆やシャーペンは用いません。
ですので、書き損じた時は書き直しになり、時間がかかってしまいます。考えながら書くと、必ず失敗します。
パソコンで文章を作成し、手直しをして完成したものを見ながら手書きをします。
書き上げたときはどっと疲れてるんだよね~
無難な便箋とボールペンは常備しておく
いざという時にすぐに対応できるように、無難なデザインの便箋と、書き味のよいボールペンは常備しておきましょう。
イラストの入った便箋や、インクがかすれ気味な安価過ぎるボールペンは避けます。
軽めの謝罪文で対応する場合は一筆箋のようなサイズも重宝します。
読みやすく丁寧な文字を意識する
くずした漢字を多用したり、書きなぐったような印象を受ける書き方は、誠意を感じられません。
ただ、めちゃくちゃきれいな字である必要もありません。文字のとめ・はね・はらいを丁寧に書き、誠実な印象を感じさせるように意識しましょう。
これを機に、少しでも丁寧な字を書けるように研鑽するのもいいかもしれません。
メールの場合の注意点
タイトルは社名・店名が無難
「お召し物を汚してしまったお詫びの件」×
「申し訳ございませんでした!」×
「食事処△△ □□店でございます。」
「△△株式会社 □□店でございます。」
文章は短く、適度に改行する
お客様が謝罪文をスマホで読まれた場合は、文章が長すぎると読みづらく、ストレスに感じてしまいます。
「。」ごとに改行を意識しましょう。
送信する時間帯に注意する
飲食店では、開店前や閉店後に事務作業をすることが多くなってしまいます。
早く返信を送ろうとして非常識な時間帯に送信しては2次クレームになってしまいます。
9:00~20:00の間がベストじゃ!
電話番号があれば、まずは電話!
お客様相談室のメールにお客様の情報として電話番号があれば、メールを送るよりも前に、電話を掛けましょう。
わざわざ番号を記載しているということは、責任者からの連絡が欲しいという意思表示である場合がほとんどです。
電話って嫌だけど…すぐに掛ける方が良いね
お昼と夕方の2回掛けても相手がでず、翌日のお昼にもう一度掛けてもでなかったら、夕方~夜にメールを送るという判断をします。
謝罪文の冒頭の「この度は~」の直前に以下の文章を入れます。
何度かお電話を差し上げましたが、お忙しいご様子でしたのでメールにて失礼致します。
その他の注意点
時候の挨拶は不要
謝罪文の冒頭に季節の挨拶は不要です。
今回の来店・当店を選んでいただいた感謝を伝えたのち、すぐに本題に移ります。同様に、後半に「ご自愛ください」のような文も必要ありません。
感謝の手紙やお褒めのメールに対する返信では入れてもOK
誤字脱字に注意
特にお客様のお名前には十分注意をします。
「高と髙」「崎と﨑」など、注意していないとうっかり見落としてしまう事があります。
手書きで便箋に書く場合、数字は漢数字、英語はカタカナで書くか用紙を横にして左から右にアルファベットを書きます。
店長さんへ
クレームは、自分達では見過ごしがちな問題点や課題が浮き彫りになります。
それは、店をレベルアップさせるチャンスでもあります。
しかし、対応に時間が奪われ、精神的に負担になっている事が多いのも現実です。
謝罪文の文章の書き方や言葉使いの良し悪しで悩む時間はもったいないと感じます。
この記事が少しでもお役に立てれば嬉しいです
原因をつきとめ、どうやったら2度と起きないか解決策を立案し、実行することこそ店長の仕事なのですから。
他の記事でも、クレーム処理の判断基準や対応マニュアルを紹介していますので、ぜひご覧ください!
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